
「茨木市では、市営葬儀を利用する人が多い」と聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。
茨木市営葬儀が始まったのは昭和28年(1953年)。制度開始から70年以上が経過した現在も利用が続いており、令和7年度には938件の市営葬儀が行われています。
では、民間の葬儀社や家族葬ホールが数多くある現在でも、なぜ茨木市では市営葬儀が利用され続けているのでしょうか。
その背景には「市営だから安い」という理由だけでなく、料金と内容の分かりやすさ、火葬場と式場が一体となった利便性、多様な葬儀への対応、市と民間事業者が役割を分担する仕組み、そして70年以上続いてきた地域での定着があります。
この記事では、茨木市が公開している条例・市営葬儀の手引き・事務報告などをもとに、茨木市営葬儀が長く利用されてきた背景を詳しく解説します。
筆者 山田 浩貴

株式会社華の誠 代表取締役 山田 浩貴
株式会社華の誠 代表取締役 山田 浩貴
茨木市・箕面市・摂津市・寝屋川市・門真市に根差した地域密着型の葬儀社。家族葬・一日葬・火葬式など、小規模で無理のないご葬儀を中心に、多くのご家族様のお見送りをお手伝いしてまいりました。市営葬儀・規格葬儀・市民葬儀・組合葬儀などの公的制度にも対応し、また弊社は大阪府の公的葬儀契約自治体トップクラスを誇っており地域の特性に合わせた最適なご提案が可能です。
突然のことで不安を抱えるご家族様にも安心してご相談いただけるよう、費用や流れをわかりやすく丁寧にご案内することを大切にしています。
茨木市営葬儀は昭和28年から70年以上続いている
茨木市営葬儀条例が制定されたのは、昭和27年(1952年)6月27日です。
その後、昭和28年6月1日に条例が施行され、市営葬儀の制度が始まりました。2026年現在で、制度開始から73年以上が経過しています。
興味深いのは、市営葬儀が設けられた目的です。
茨木市営葬儀条例では、市民生活改善の一端に資するため、「簡素低廉にしてかつ厳粛を旨とし、因襲と虚礼を打破する」という考え方が示されています。
つまり、市営葬儀は単に「市が安価な葬儀を提供するため」だけに始まった制度ではありません。
葬儀に伴う過度な形式や負担を見直し、市民が必要な内容で厳粛に故人を見送れるようにするという、市民生活改善の目的を持って始まった制度だったことが分かります。
現在も一定規模で利用されている茨木市営葬儀

70年以上前につくられた制度というと、「現在はあまり利用されていないのでは」と思われるかもしれません。
しかし、茨木市が公表している事務報告を見ると、市営葬儀は現在も一定規模で利用されています。
| 年度 | 市営葬儀件数 | 火葬場利用件数 | 火葬場利用件数との単純比較 |
|---|---|---|---|
| 令和3年度 | 1,003件 | 2,633件 | 約38.1% |
| 令和4年度 | 1,041件 | 2,769件 | 約37.6% |
| 令和5年度 | 1,024件 | 2,807件 | 約36.5% |
| 令和6年度 | 1,085件 | 2,925件 | 約37.1% |
| 令和7年度 | 938件 | 2,788件 | 約33.6% |
出典:茨木市「事務報告」各年度をもとに作成
令和3年度から令和6年度までは年間1,000件前後、令和7年度も938件の市営葬儀が行われています。
なお、表の割合は「市営葬儀件数÷市立火葬場利用件数」を単純計算したものです。
市立火葬場の利用件数は「茨木市内で行われたすべての葬儀件数」と同じではないため、「茨木市の葬儀の約3〜4割が市営葬儀」と断定できる数字ではありません。
それでも、70年以上前に始まった制度が、現在も年間900〜1,000件規模で利用されていることは、茨木市における市営葬儀の定着度を考える一つの材料になります。
なぜ茨木市営葬儀は利用され続けている?5つの理由

茨木市営葬儀が長く利用されてきた背景を、市の制度や現在の仕組みから5つに整理してみます。
理由1.市が基本となる葬儀内容と料金を定めている
一つ目は、葬儀の基本となる内容と料金が市によって定められていることです。
2026年10月現在、市営葬儀の全部使用料は81,880円です。
この料金には、主に次の内容が含まれています。
- 納棺・棺箱
- 葬祭用品等の供与
- 祭壇・幕類の飾り付け
- 通夜・告別式の進行
- 霊柩車の配車
- 火葬
一方で、遺影写真、ドライアイス、式場使用料、病院などからの搬送、供花、料理、返礼品、宗教者へのお礼などは別途必要になります。
「市が提供する基本部分」と「必要に応じて別途用意するもの」が比較的分かりやすく分かれていることは、市営葬儀の大きな特徴です。
茨木市自身も、市営葬儀について「無駄を省いたシンプルな葬儀」「料金体系が明確」と案内しています。
理由2.告別式場と火葬場を一体的に利用できる
茨木市立斎場には、告別式場と火葬場が併設されています。
そのため、市立斎場で通夜・告別式を行った場合、葬儀後に離れた火葬場まで大きく移動する必要がありません。
茨木市も公式資料で、火葬場が併設されているため移動の負担を抑えられることを、市営葬儀の特徴として紹介しています。
特に高齢の方や小さなお子さんが参列する場合、式場から火葬場までの移動が少ないことは、ご家族や参列者にとって実務上のメリットになります。
なお、茨木市立斎場の告別式場で行える葬儀は、市営葬儀に限られています。
理由3.少人数の葬儀から直葬まで対応している
市営葬儀というと、決められた形式で行う昔ながらの葬儀をイメージする方もいるかもしれません。
しかし現在の茨木市営葬儀では、参列人数や希望する形式に合わせて複数の選択肢があります。
茨木市立斎場には、少人数向けの第5告別式場をはじめ、人数に応じて利用できる複数の告別式場があります。
また、市営葬儀の手引きでは、告別式を行わず火葬のみを行う直葬についても案内されています。
- 少人数で行う葬儀
- 参列者を迎える葬儀
- 火葬のみを行う直葬
- 仏式
- 神式
- キリスト式
- 無宗教式
など、ご家族の状況に合わせた利用方法が用意されています。
さらに、茨木市内であれば、自宅や集会所などで市営葬儀を行うこともできます。
一つの決められた葬儀形式だけではなく、人数や宗教、希望する見送り方に応じて利用方法を選べることも、現在まで利用されている背景の一つと考えられます。
理由4.「市営+民間事業者」で必要な部分を補える
茨木市営葬儀の仕組みで特徴的なのが、市だけですべてを行うのではなく、民間の「祭壇脇飾り等取扱業者」と役割を分担していることです。
茨木市が公開している市営葬儀の手引きでは、利用する際に主に次の4点を決めるよう案内されています。
- 式場の大きさ
- 葬儀形式
- 祭壇脇飾り等取扱業者
- ご遺体の安置場所
市営葬儀に含まれない遺影写真やドライアイス、病院からの搬送、供花、返礼品などについては、祭壇脇飾り等取扱業者と相談して手配します。
費用についても、茨木市の手引きでは、主に次のように整理されています。
- 市へ支払う費用
- 祭壇脇飾り等取扱業者へ支払う費用
- 料理代
- 宗教者へのお礼
補助業者へ依頼する内容については、必要性や予算に応じて打ち合わせを行います。
つまり、市が葬儀の基本部分を担い、それだけでは足りない部分を、ご家族の希望や予算に合わせて民間事業者と相談するという仕組みです。
これは「すべてが決められていて変更できない市営葬儀」というイメージとは、少し異なる部分ではないでしょうか。
理由5.70年以上続き、地域の選択肢として定着してきた
制度開始から70年以上が経過していることも、茨木市営葬儀を考えるうえで重要です。
昭和28年に制度が始まり、令和7年度にも938件の市営葬儀が行われています。
「親が利用したから子どもも利用している」など、世代をまたいで選択が引き継がれていることを示す公式な統計は確認できていません。
一方で、70年以上にわたり制度が継続し、現在も年間900件を超える利用があることから、茨木市民にとって市営葬儀が葬儀の選択肢の一つとして長く定着してきたことはうかがえます。
70年以上前の理念は、現在の葬儀にも通じる部分がある
茨木市営葬儀の歴史を調べていくと、現在も利用されている背景を考えるうえで興味深い共通点が見えてきます。
昭和27年に制定された条例では、制度の考え方として「簡素低廉」「厳粛」「因襲と虚礼を打破する」という理念が掲げられています。
一方、現在の茨木市も、市営葬儀について「無駄を省いたシンプルな葬儀」「料金体系が明確」と案内しています。
もちろん、昭和20年代と現在では、家族構成も葬儀に対する考え方も大きく異なります。
それでも、必要以上に形式を大きくせず、ご家族に必要な内容で故人を見送るという考え方には、現在の家族葬や小規模葬にも通じる部分があります。
70年以上前につくられた制度が現在も利用されている背景には、この基本的な考え方が、時代が変わっても一定のニーズと重なる部分があるのかもしれません。
市営葬儀なら必ず費用が安くなるとは限らない

ここまで読むと、「それなら市営葬儀を利用すれば、必ず葬儀費用を安くできる」と思われる方もいるかもしれません。
しかし、市営葬儀の全部使用料81,880円は、葬儀に必要なすべての費用を含んだ総額ではありません。
例えば、次の費用が別途必要になる場合があります。
- 告別式場使用料
- 病院などからの搬送費用
- 安置に必要な費用
- ドライアイス
- 遺影写真
- 供花
- 料理
- 返礼品
- 宗教者へのお礼
そのため、市営葬儀を検討するときも「市へ支払う金額」だけを見るのではなく、ご家族が希望する内容を含めた場合、葬儀全体でいくら必要になるのかを確認することが大切です。
市営葬儀と民間葬儀社のプランを比較する場合も、表示価格だけではなく、何が含まれているのか、最終的な支払総額はいくらになるのかまで確認しましょう。
茨木市営葬儀を利用するとき、葬儀社はどんな役割をする?

「市営葬儀」という名称から、市役所へ申し込めば葬儀に必要なことをすべて市が対応してくれると思われることがあります。
しかし実際には、市営葬儀に含まれない部分について、祭壇脇飾り等取扱業者と相談しながら準備を進めます。
2026年10月現在、株式会社華の誠も、茨木市公式サイトに掲載されている祭壇脇飾り等取扱業者の一社です。
華の誠では、市営葬儀をご検討されているご家族から、次のようなご相談も承っています。
- 何から決めればよいのか分からない
- 市へ支払う費用以外に何が必要なのか知りたい
- 家族だけで静かに見送りたい
- 必要なものだけを追加したい
- 最終的にどのくらいの費用になるのか確認したい
市営葬儀の基本部分を活用しながら、搬送・安置・ドライアイス・遺影写真・供花など、ご家族に必要な内容を整理していくことができます。
大切なのは、市営葬儀を利用すること自体を目的にするのではなく、ご家族がどのようなお見送りを希望しているのかを整理したうえで、市営葬儀が自分たちに合っているかを考えることです。
茨木市で利用できる葬儀プランについては、華の誠の茨木市葬儀プランもあわせてご確認ください。
茨木市営葬儀についてよくある質問
- 茨木市営葬儀は誰でも利用できますか?
-
茨木市営葬儀には利用条件があります。死亡された方や喪主の住民登録など、条件によって利用可否が異なるため、申し込み前に茨木市の市営葬儀窓口または取扱業者へ確認しましょう。
- 茨木市立斎場で葬儀をする場合、市営葬儀を利用する必要がありますか?
-
茨木市公式サイトでは、茨木市立斎場の告別式場で執り行える葬儀は市営葬儀に限ると案内されています。一般の葬儀社プランをそのまま持ち込んで斎場だけを利用する仕組みではありません。
- 81,880円ですべての葬儀費用をまかなえますか?
-
いいえ。81,880円は市営葬儀の全部使用料であり、式場使用料、搬送、遺影写真、ドライアイス、供花、料理、返礼品、宗教者へのお礼などは含まれていません。希望する葬儀内容を含めた総額を確認することが大切です。
- 家族葬や直葬でも市営葬儀を利用できますか?
-
利用できます。茨木市立斎場には少人数向けの告別式場もあり、告別式を行わず火葬のみを行う直葬にも対応しています。人数や希望する見送り方に合わせて相談しましょう。
- 宗教がなくても市営葬儀を利用できますか?
-
利用できます。市営葬儀の手引きでは、仏式・神式・キリスト式のほか、宗教者を呼ばない無宗教式も案内されています。宗教・宗派について不安がある場合は、事前に相談するとよいでしょう。
- 市営葬儀と民間葬儀社のプランはどちらを選べばよいですか?
-
一概にどちらが適しているとはいえません。希望する葬儀形式、人数、利用したい式場、必要なサービス、予算によって変わります。表示価格だけではなく、それぞれのプランに何が含まれているか、最終的な費用はいくらになるのかを確認して比較しましょう。
まとめ|茨木市営葬儀が70年以上続く理由は「安さ」だけではない
茨木市営葬儀は昭和28年に始まり、70年以上にわたって利用されてきました。
近年も年間900〜1,000件規模の利用があり、市立火葬場の利用件数と単純比較すると3〜4割程度に相当する規模で利用されています。
長く利用されている背景として考えられるのは、次の5つです。
- 市が基本となる葬儀内容と料金を定めている
- 告別式場と火葬場を一体的に利用できる
- 少人数の葬儀から直葬まで対応している
- 市営と民間事業者が役割を分担する仕組みがある
- 70年以上続き、地域の選択肢として定着してきた
そして、制度発足時から掲げられている「簡素低廉」「因襲と虚礼を打破する」という考え方には、必要な内容を選びながら故人を見送る、現在の葬儀にも通じる部分があります。
ただし、市営葬儀を利用すれば必ず葬儀費用が安くなるとは限りません。
大切なのは、市営葬儀の仕組みを理解したうえで、ご家族がどのようなお見送りをしたいのか、何が必要なのか、最終的にどのくらいの費用になるのかを整理して選ぶことです。
監修者 髙橋 亮

株式会社ディライト 代表取締役 髙橋亮
株式会社ディライト 代表取締役 髙橋亮
葬儀業界が抱える人材不足と集客という2つの課題に対応すべく、葬儀業界専門の人材派遣や集客支援を2007年より行う。
中でも葬儀社比較サイト「葬儀の口コミ」は、公平性を担保した評価システムを採用し、業界最大級の利用者数を有するプラットフォームとして高く評価されている。
